
地域によってさまざまな食文化がある
大分の食文化について見ていきましょう。ここでは「北部」「中部」「西部」「南部」の4エリアに分け、それぞれの特徴を解説していきます。
北部エリア
中津市、国東市、宇佐市などで構成されたエリアです。このエリアは今でも行事食を大切にしているのが特徴です。
県の北西端に位置する中津市と隣接する宇佐市では古くから「物相すし」が食べられてきました。「物相すし」は、4月の金毘羅まつりや2月の稲荷まつりの後に食べられる行事食で、具材を混ぜた酢飯を一人前ずつ持って出す器(物相)に入れ、押しぶたで上から圧力をかけて作ります。
また、県内で唯一の村である姫島村に伝わっているのが「鯛麺」です。尾頭つきの鯛を酒と塩、醤油で炊き、それを茹でたうどんにトッピングしたシンプルで豪華な料理ですが、字の響き(鯛麺=対面)から、顔合わせや結婚式などで提供されることが多いようです。
中部エリア
由布市、別府市、大分市、臼杵市などで構成されたエリアです。このエリアでは新鮮な海の幸を堪能できます。エリア内にある別府湾には約300種類の魚が生息しているといわれていますが、その別府湾で獲れる「しらす」は「豊後別府湾ちりめん」として有名です。また、日出城跡の下には海底から淡水が湧き出る海域がありますが、そこで獲れたマコガレイは非常に美味しく、「城下カレイ」と呼ばれブランディングされています。
西部エリア
熊本県と福岡県に隣接し、竹田市、日田市、九重町、玖珠町で構成されたエリアです。このエリアの特徴は魚を無駄なく食べる工夫がされていることです。たとえば、日田エリアでお盆に欠かせない「たらおさ」は、たらのエラや内臓を乾燥させて作られ、巨大な歯ブラシのような形をしているのが特徴です。独特の臭いがするので、数回水を変えて柔らかく戻し、細かく切ったものを甘辛く煮込んで食べます。
また、交通インフラが発達していなかった江戸時代、海から遠く離れた竹田市では、新鮮な魚介類を食べる機会は滅多にありませんでした。そのため、海の魚は貴重な食材として珍重され、無駄にせずに消費するために「頭料理」が考案されました。頭料理はアラやクエ、ハタなどの大きな魚を使い、身だけでなくエラや胸鰭、内臓など、通常は捨てられる部分も湯引きして食べます。
南部エリア
佐伯市と豊後大野市から構成されたエリアです。このエリアは日々の暮らしから生まれた素朴な郷土料理が特徴です。たとえば、九州最大の面積を持つ佐伯市の漁村で作られている伝統的な調味料「ごまだし」は、通年で水揚げされるエソを焼いてほぐし、醤油、ごま、みりんを加えたもので、さまざまな料理に使われています。
また、豊後大野エリアの農村地方から生まれた「じり焼き」もご当地スイーツとして有名です。小麦粉を水にゆるく溶かしてクレープのように薄く焼き上げ、黒糖やかぼちゃの餡を巻いて食べます。